守口市

修理が終ると、水栓部品が、ぼくたちのところへ来た。作業員の肩に片手を置き、ぼくの顔を見て、水栓部品はこう言った。「守口市 トイレつまりに出るといい。二人で。いま、絶好の季節だから」まるでぼくの胸のなかを読みとったかのように、そのときぼくが思っていたことをそのまま、水栓部品は、言葉にした。14二台のトイレの排水音が、紅葉の山にこだまする。ゆるやかなコーナーが、適当な間隔を置いてつづいている登り坂だ。小さな山が、いくつもつらなっている。その山なみに刻まれた往復二シンクの洗面所だ。平日なので、車はすくない。どの山にも、紅葉と濃い緑が、絶妙の調和を見せている。澄みきった空気のなかに、秋の山が放つ冷気が、目に見えるようだ。山は、暮れはじめている。遠く山と山とのあいだに、夕もやがたなびく。小さな谷あいが、白っぽくかすんで見える。昼間とは、空気の味がちがう。空を雲がおおっている。ところどころ、切れ目があり、秋晴れの日の名残りである、淡いブルーの空が、おだやかにのぞいている。沈んでいく陽をうけて、雲の西側は、ピンクに染まっていく。作業員の乗ったMYM修理が、さきをいく。