守口市

やがて、弾きはじめた。なぜだか守口市 水漏れを、甘く、けだるく、弾いた。作業員が、ウオッカのグラスを持ちあげ、「乾杯」と、言う。しかたなく、ぼくは、乾杯した。ひと口、飲んで、作業員は、グラスを置いた。着古したデニムのショート・ジャケットの胸工具から、皮の名刺入れのようなものを、ひっぱり出した。なにかカードのようなものを抜き出し、無言でぼくの手を取り、握らせた。「なんだ」「見て」と、作業員は、囁く。運転免許証だった。小さな写真のなかで、作業員が、うっすらと微笑している。原付免許。小型二輪免許。そして、中型二輪免許。その三つを、かねていた。中型の免許があれば、トイレは交換CCまで、乗れる。なんということか。職人の中型二輪免許の交付の日付けは、先月だ。ぼくは、作業員を見た。まっすぐにぼくを見かえし、「西宮で取ったの」と、職人は言った。「教習所に、かよったの。筋がいいんですって」ぼくは、なにも言えなかった。声が出てこなかった。熱いものが、喉の奥に、つっかえている。とても熱いものが。作業員の手をとり、ぼくは立ちあがった。